「心の和室の襖はビリビリ」

古賀裕人のブログ

歯を磨きながらできること、あるいはそのタイミング

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 朝が一番忙しい。


 シャワーを浴びなくちゃ、布団を畳まなくちゃ、脱いだ服を畳まなくちゃ、コンタクトをつけなくちゃ、歯を磨かなくちゃ、ご飯を食べなくちゃ、髪を乾かさなくちゃ、鞄の中身をチェックしなくちゃ、ゴミをまとめなくちゃ、トイレに行かなくちゃ、トマトに水をやらなくちゃ、、、


 そんな風にくちゃくちゃと隙間なく次から次へと行動を起こしていかないと電車には間に合わないし、間に合わせるためにはすごく急がなくてはならない。

 

 私たちは絶対に駅まで走ったり階段を駆け上がったりしたくないし、見知らぬジジイの肩に触れて雑な舌打ちをされるのはまっぴら御免なのである。


 しかしそうやって多くの人間性がドタバタと日常性に忙殺されているこの朝の時間帯、本当はやった方が良いのにも関わらず、やらずに済ませてしまっている作業が実はひとつあるんじゃなかろうか。


 それは良くよく考えてみれば明らかにやった方が良さそうであるのに、皆がついうっかり忘れてしまっている種類のものである。(もちろん私たちは大切なことから順に忘れていく)


 さて私たちは毎朝「その日の自分の心の状態」をきちんと点検する必要があるだろう。


 心の状態を正確に把握することは即ち自身の行動選択における根拠を持つということであり、それはそのまま「その日一日をどのように過ごすか」という方針づくりに直結する。


 私はこれを朝の歯磨きのタイミングでやるのが良いと思っている。


 起きてすぐではまだ寝ぼけていて身体も怠く、心の状態をきちんと観察するのは難しい。しかしシャワーを浴びて服を着て歯を磨く頃合いになれば、何となく頭も身体も目が覚めてきて、また歯を磨いている間は極めて暇なので何かを考えるのにはもってこいの時間だろうというのが理由である。


 点検の具体的な方法は、例えば「私は今日この心の状態でいつもと同じようにあの地獄的な満員電車を乗り切ることが出来るだろうか、正直に」と、そんな風に心の中で尋ねてみるのである。


 すると不思議なことに、大丈夫な時にはなんの反応もないのだが、ダメな時にはチクリと胸が痛むのである。すごくダメな時にはもちろん反応はずっと大きくなる。


 そうやって自分の心の状態を、身体の反応でもって点検していくのである。


 「今日の心の状態で満員電車に乗るのは厳しい」、「もしも体重を掛けられたら思い切り咳払いをして肩でドンとやってしまうかもしれない」ということであれば、時間をずらせるならばずらして混雑を避けたり、それが難しいようであればマスクにお気に入りのアロマオイルで香りづけをして好きな音楽をいつもより大きな音で聴きながら乗るなどして少しでもストレスを軽減する工夫をしてみると良いだろう。


 また重要なのが、対人コミュニケーションにおける許容度の確認である。


 私たちは自分の人格や性格は不変であるように感じているが、実は他人の言動をどこまで許容でき得るかについてはその日その時の心の状態によって大いに変化するものである。ごく簡単に言うと、「元気な時はそれ大丈夫だけど、今日は具合悪いから許せねえわ」、そんな様なことはしばしば起こり得るのだ。


 さて私たちの身の周りには「お、今日機嫌悪いね、生理?」が口癖であるようなタイプの激烈に嫌な奴というのが居るだろう。嫌な奴という程ではないけれど苦手だな、程度の相手でも結構。歯を磨きながらそんな相手を思い浮かべてみよう。


 そしてそんな相手に対して、今日もきちんと社会性をもって愛想笑いを返すことができるかどうか、自分の心に尋ねてみる。


 大丈夫であればもちろん普段通りで大丈夫。逆に「ちょっと今日はあんまり関わりたくないな」、「場合によっては沸かしたての玉露をぶっ掛けた上でボコボコに殴ってしまうかもしれないな」と思ったら、なるべく顔を合わせないようにして上手に過ごすべきである。どうしても顔を合わせなくちゃいけない、話さなきゃならないというような相手であれば、思い切って「具合悪いアピール」をするのも手である。


 そうやって自分の心の状態に合わせて過ごし方を工夫して、なるべくストレスがかからない状況をつくる、心に負担がかからないように過ごす、というのがとても大切である。

 

 結果を変えずに過程を変えるというような意識を持つと分かり良いかもしれない。


 例えば「いつも通りの時間に出社する」という結果は変えずに、「電車の時間や乗り方、車内での過ごし方を工夫する」という様に過程だけを変えていくイメージである。


 そういった工夫をその日の自分に合わせて具合良くカスタマイズするためには、やはり「今日の自分には何が耐えられて、何が耐えられないのか」をきちんと把握することが重要であり、その作業こそが今日の自分を、また周囲の人々を守ることに繋がるのである。


 何につけても他人の行動を変化させるのは極めて困難である。しかし自分の行動はすぐにでも変えられ、また誰にも迷惑をかけないようにしながら楽をする方法というのはいくらでもある。


 それは決してズル賢い方法という訳ではなくて、私たちが明るくに楽しく健康に日々を過ごすために必要なことなのであるが、目下私の興味関心は「朝の歯磨きのタイミングいつなの問題」である。


 朝の歯磨きのタイミング、それは朝食の前と後、どちらが正解か。


 朝食の後に歯磨きをすれば、一晩の内に溜まった口内の雑菌を朝食と共に飲み込んでしまうことなるし、


 朝食の前に歯磨きをすれば、食後に歯磨きをせずにパン屑を歯間パンパンに詰まらせたまま家を出ることになる。


 結局、素人考えではどちらも一長一短で気持ちが悪く、最終的に朝食の前後に二度歯を磨くことになるので非常にストレスである。とても耐えられそうにない。


(2020-02-15)